nowhere to belong

Jim O'Rourke / The Visitor

Jim O'Rourke / The Visitor
Jim O'Rourke / The Visitor (Drag City) ('09)

 これは、夢なのかもしれない。Jim O'Rourkeの新しいレコードを聴いて、ふとそう想った。古巣Drag Cityからの自身8年ぶりとなるオリジナル・アルバム。アルバム・タイトルは過去3作同様に今回もニコラス・ローグの映画(『地球に落ちて来た男 The Man Who Fell to Earth』)にちなんだものである。アコギの爪弾きからそっと始まる1曲38分の大曲。それを聞いただけでつい身構えてしまいそうになるが、安心して欲しい。冒頭のアコギのフレーズはソナタの様に一つのモチーフとなることもなく、跡形も無く消え去り、すぐさま次の展開へと移り変わる。全てJim本人が演奏するアコースティック&エレクトリック・ギター、バンジョー、ピアノ、ドラムス、管楽器等の音色が幾重にも重なり、マイルドなハーモニーを演出したかと思えば、素っ気無く散り去る。浅い眠りの中短編の夢を続けざまに見ているかのように、アンサンブルは次々と席替えをしていく。最初に本作を聴き終わったとき、正直ピンとこなかった。録音、ミックスがとても良いことだけはわかったが、曲の場面転換が速く、幾つものフレーズが複雑に絡み合っているせいか、自分の脳が情報処理に追いついていないようだった。でも、何度か聴き返すうちに楽曲がほぐれ、耳に馴染んでくるのがわかった。その瞬間に背中のゾクゾクが止まらなくなっていた。しかし、何度聴いてもプレーヤーが止まったときに残る感情は、喜びでも悲しみでもなく、えも言われぬもののままであるが、この感情はそのままそっとしておくのが良いのかもしれない。

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  1. 2009/10/18(日) 21:37:08|
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V.A. / Warp20 (Chosen)

V.A. / Warp20 (Chosen)
V.A. / Warp20 (Chosen) (Warp) ('09)

 今やシーンに大きな影響を与え続ける唯一無二のレーベルとなったイギリス・シェフィールド発のWarp。今年はレーベル設立20周年にあたり、Warp20と題し世界各地でのレーベル・イベントや記念コンピレーションのリリースが目白押しとなっている。コンピレーション盤の一つ、『Warp20 (Chosen)』(上写真)はdisc1に今年春にweb上で行われたファンによる人気曲投票が反映された10曲が、またdisc2にはWarpの共同設立者であるSteve Beckettにより選ばれた14曲が収録されており、まさにベスト・オブ・ベストといった内容となっている。というところまでは、テクノ・エレクトロニカ愛好家の誰もが知っていることなので、いつもの堅苦しいレヴューは置いといて、今回は「私とWarp」と題した日記調文章に『Warp20 (Chosen)』収録曲を絡める形式で進めていきたいと思う。(以下超個人的な内容です・・・)

#1 Aphex Twin / Windowlicker
Warp20 私とWarpとの出会いは2000年に遡る(創立当初からのファンなどではなく、ペーペー。)。当時高三だった私はあいもかわらずグランジ〜USオルタナものを聴き漁っていたのだが、特にNINへの思い入れは相当なものだった(haloナンバー順に自室の部屋の床にCDを並べてニヤけてたほどに・・・)。そのNINの代表作『The Downward Spiral』のリミックス盤である『Further Down The Spiral』に収録されているAphex TwinによるリミックスがWarpアーティストとの出会いである。それからAphex Twinはかなりの変態であるという情報を得て、18の誕生日に『Richard D. James Album』を購入した(なんちゅう動機・・・)。これが初購入のWarp作品。この作品を聴いて、それまで「テクノ=Underworld」というほどの貧弱な知識しか持ち合わせていなかった私は、踊れないテクノ=リスニング向けテクノ=根暗なテクノがあることに気づき一気にこの手の音楽にのめりこんでいくのであった。

#2 Boards Of Canada / Roygbiv
 ご存知のとおり当時の音楽シーンは折りしもIDM、エレクトロニカの最盛期であり、非凡なアーティストが次々とメディアに取り上げられていた時期で、私はまんまエレクトロニカ・ブームの波に飲み込まれていった形となった。Aphex Twinもひととおり聴き、次にハマったのがBoards Of Canadaである。代表作『Music Has The Right To Children』や『Geogaddi』に漂うサイケデリアは、当時大学進学で上京していたuzu青年の郷愁感をひたすら煽るのだった。特に、北へ向かう特急列車で雪の残る山間を線路と併走する小川の煌くせせらぎを眺めながら聴いたこの曲は忘れられない。私のmp3プレーヤー再生曲の常連である。

#3 Squarepusher / My Red Hot Car
 WarpにはAphex Twinの盟友がいると聞いて聞き始めたのがSquarepusherで、最初に買ったのも本曲が収録されている『Go Plastic』だった。本作は割とノイジーで最初はキーンとする高音が苦手だったが、十八番のドリルンベースや自らプレイするベースが冴えるセッション風の曲など、彼の幅広い作風の楽曲を聴き込むうちに愛すべき存在となるのだった。(My Favoriteは2nd『Hard Normal Daddy』。)

#8 Autechre / Gantz Graf
 最初このユニット名をどう発音するのかで悩んだAutechre。私の中で前述の3アーティストとAutechreをWarp四天王とさせていただいている。Autechreの場合、彼らのインテリジェンスで難解な作風のイメージがメディアにより先行してしまったせいもあって、当時エレクトロニカ入門時の私も多分にその影響を受け、いかに聴きこなすかという受け身のリスニングをしていた。が、聴き進めていくうちに彼らの肉感的で情熱的な感性に気づくこととなる。

#6 Plaid / Eyen
 Warp四天王に続くのがPlaid(五天王にしたい気持ちは山々)。もちろん母体であったBlack Dog (Productions)も好きだが、3人から2人になったPlaidでの突き抜けぶりは素晴らしいものがある。私の初Plaidは本曲が収録されている『Double Figure』。本作なら"Eyen"に続く"Sqance"がランクインすると思っていたが、意外。オリジナルではないが、Bjorkの"All Is Full Of Love"のリミックスは素晴らしい。

#7 Luke Vibert / I Love Acid
 2004年にラフォーレミュージアム六本木で行われたSquarepusherの来日公演は、ゲストミュージシャン多数のオールナイト公演で、エレグラって言ってもいいんじゃないかというくらいのヴォリュームだった。Squarepusherは自らの第二隆盛期を築き上げた当時の最新作『Ultravisitor』を引っさげての来日であり、気合の入れようといったらそれはもう・・・圧倒的なパフォーマンスだった。そんなメイン・アクトが終わった後にプレイしたのがLuke Vibertであった。彼はSquarepusherの鬼気迫る演奏とは逆に、ユルユルでドープな曲で観客を踊り狂わせた。この見事な落差の演出にヤられた私は、後日彼の唯一のWarpからの作品『YosepH』を買いにレコード屋へ走るのだった。

Warp20 Box その他、初期Warpを支えたLFO御大や、エレクトロニカ新世代を担うClarkJimmy Edgar、日本盤ボーナストラックには今やレーベルの新しい顔として定着した!!!のナンバーを収録。また、Steve Beckett撰のdisc2には忘れてはならないBroadcastNightmares On Wax、ブレイクまで秒読みのGrizzly BearFlying Lotus等を収録している。そして何より私の愛しいSeefeelも!
 今回紹介した『Warp20 (Chosen)』は『Warp20 (Box)』のボックスセットのバラ売り盤であり、同時にリミックス集の『Warp20 (Recreated)』もリリースされている。また、国内盤としてボックスに収録の未発表曲集『Warp20 (Unheard)』も来月リリースされるので、こちらも非常に楽しみである。最後に、今回のリリースをして、はからずも久しく遠ざかっていたWarpサウンドを自分の中で再評価することとなったわけだが、ここからポスト・ロック、アンビエント・音響派、ノイズ・アヴァンギャルドへ繋がった私の音楽遍歴の中で、Warpとの出会いは一つの大きなターニング・ポイントであったことは間違いないようである。


 
  1. 2009/10/11(日) 20:50:57|
  2. Techno, Electronica
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Nurse With Wound / Soliloquy For Lilith

Nurse With Wound / Soliloquy For Lilith
Nurse With Wound / Soliloquy For Lilith (Idle Hole Records) ('88) / (United Dairies) ('03)

 Nurse With Wound(以下NWW)の1988年発表の3枚組LP。NWWといえばイギリスを代表するアンダーグラウンド・ノイズ・実験ユニットだが、78年にSteven Stapletonを中心に3人組で活動開始するも、81年以降は実質Stevenのソロ・ユニットとなり。(他アーティストとのコラボレーションが多いのでそう感じさせないが)、未だに現役で音楽活動を続けている。本作は妻Diana Rogersonとの間に儲けた娘Lilithへ捧げられた作品であり、数多ある作品の中で聴くことができるNWW流ノイズ・コラージュ・サウンドは少し影を潜め、愛娘に静かに語りかけるようなアンビエント・ドローン作品となっている(タイトルの"Soliloquy"は独り言の意)。約17分のトラックが6つ用意されており、どのトラックも一定周期でうねりを繰り返すドローンが時空の歪みの中を延々と漂っているような恍惚としたサウンドを生み出している。中でも#3は倍音が至高の輝きを見せ、若干ノイジーだが程よいバランスを保っている。果たしてこの作品を聴かされた子供はどういう反応を示すのだろうか。普通なら非日常的な音に恐怖感を覚え泣き出しそうだが、音楽の才能があればこの音で寝てしまうのかもしれない(自分に子供ができたら聴かせてやりたい)。ちなみにラストの#6で娘Lilithの泣き声らしき音が聴こえる。本作は後に2曲のアウトテイク?が追加され、3枚組CD BOXとしてリマスター盤が再発された(僕が所持しているのはこれ)。が、オリジナルのLPはもちろんのこと、数種類ある再発盤も今では入手困難になっているので、見つけたら即買ってください。アートワークも美麗。

  1. 2009/09/21(月) 21:41:23|
  2. Ambient, Experimental
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Mika Vainio / Aineen Musta Puhelin (Black Telephone Of Matter)

Mika Vainio / Aineen Musta Puhelin (Black Telephone Of Matter)
Mika Vainio / Aineen Musta Puhelin (Black Telephone Of Matter) (Touch) ('09)

  Pan SonicMika Vainioによるソロ最新作がTouchよりリリース。'08年に限定7"『Behind The Radiators』のリリースはあったものの、Touchからのフルアルバムとしては'03年の『In The Land Of The Blind One-Eyed Is King』以来。Mikaといえば、昨年リリース後高評価を受けたØ名義での『Oleva』が記憶に新しいが、本作でも高精度の緻密さを発揮しこれまでに無い完成度を誇っている。冒頭から電子音、ノイズ、ドローン、フィールドレコーディングスが次々と現れてはカットアップされていく。それぞれの音要素が互いに関連性を持つように絶妙に配置されており、音質もとても良い。カラスの鳴き声に始まり、雷鳴とノイズがマッシュアップされ、オーケストラの音まで登場する#2、。過去に共作経験のあるJohn Duncanに捧げられている#3、ラストへ昇り詰める展開がドラマティックな最終曲#7、と聴き所が満載である。アナログとデジタルの狭間を行き来する刺激的かつ幽玄な音世界。このソロ名義での作品は、Ø名義でのそれと比べると非常に実験色の濃い作風となっているが、しかし、案ずる事勿れ。その実験性の背後には確かな情熱を感じ取ることができ、これはこの種の電子音楽が陥りやすい"一方通行なメッセージ"の壁を見事に突破している。ここまでの実験性をしてこれだけドラマティックに心に響いてくる音楽を生み出すことのできるアーティストは、今や彼を置いて存在しないのではないだろうか。

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  1. 2009/09/13(日) 21:52:03|
  2. Ambient, Experimental
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Bell Orchestre / As Seen Through Window

Bell Orchestre / As Seen Through Window
Bell Orchestre / As Seen Through Window (Arts & Crafts) ('09)

 Arcade Fireの Richard Reed ParryとSarah Neufeldが参加するオーケストラ・インスト・バンドBell Orchestreの2ndアルバムを紹介。僕は本作品でこのバンドの存在を知ったのですが、そのきっかけとなったのが本作のリードトラックである"Stripes"のPV。ホルンの雄大なメロディーに導かれるミニマルなリズムと天から大地へ突き刺さる稲妻のスナップを繋ぎ合わせた映像がシンクロし、その美しさに圧倒されてしまいました。それから色々調べたところ本作はSOMAスタジオでJohn McEntireによりレコーディングされたとのことで、それがハズレであろうはずがなく迷わずく購入しました。本作は管弦楽器を中心としたクラシカル・インストゥルメントと少々のエレクトロニクスをブレンドしたサウンドで、全体を通して温かみのある音色とファンタスティックなメロディーが聴く者の心を和ませてくれます。そして注目すべきはAphex Twinの"Bucephalus Bouncing Ball"(『Come To Daddy』収録)のカヴァーをやってしまっていること。原曲が牧歌的なだけあって、生楽器が良くマッチしています。結構忠実にカヴァーしているので是非聴いてもらいたいです。また、この手の「生楽器 meets エレクトロニクス」な音楽にありがちである無駄な甘ったるさは全く無く、時にプログレッシヴに、時にシンプルに、時にダイナミックに、時にミニマルに、それぞれの楽器の特性が最大限に生かされた楽曲構成が光ります。これは今までにありそうで無かったサウンドです。日本盤にはボーナス・トラック3曲収録。




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  1. 2009/09/06(日) 21:37:14|
  2. Rock, Post-Rock, Jazz
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On / Your Naked Ghost Comes Back At Night

On / Your Naked Ghost Comes Back At Night
On / Your Naked Ghost Comes Back At Night (Type) ('09)

 先日、新宿のタワー・レコード New Ageコーナーに立ち寄った際に、ふと耳に入ってきたのがその時店内に流れていたこの作品でした。一聴して心の琴線に触れる何かを感じ取ったのですが、その時は"Now Playing"のモニターには作品名が表示されておらず、誰の作品なのか解らず仕舞いでした。そして数日後、それがSteven HessSylvain ChauveauによるユニットOnが'04年にフランスのレーベルLes Disques Du Soleil Et De L'Acierからリリースした作品がTypeから再発されたものだと解り、すぐさまレコード店に買いに走ったのでした。Steven HessといえばPan American等数多くのミュージシャンとのコラボが話題のパーカッショニストで、片やSylvain Chauveauは近年ちょっとした流行りとなっているポスト・クラシカル(このジャンルの括り方は正直好ましくないが・・。)の代表格であり、この二人が5年も前に共演していたのは露知らずでした。二人の演奏するプリペアド・ギター、ピアノ、パーカッション等の音がDeathprodことHelge Stenによるミックスされミニマル・ドローンへと仕上げられているこの作品。全般的にズブズブとした残響たっぷりのモノトーンな作風ですが、曲ごとのドローンの音色はヴァラエティーに富み、決してベタ塗りになることなく、一つ一つの音が明確に響いています。その辺りはSylvainのセンスが少なからず発揮されていると推測するのですが、どうでしょうか? 聴くまで作品の存在を知らなかったが、再発してくれて嬉しい、そんな名盤です。

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  1. 2009/08/30(日) 22:19:21|
  2. Ambient, Experimental
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Sunn O))) & Pan Sonic / Che

Sunn O))) & Pan Sonic / Che
Sunn O))) & Pan Sonic / Che (Blast First Petit) ('09)

 SuicideAlan Vega70歳の誕生日お祝いシリーズでSunn O)))Pan Sonicが共演。曲はSuicideの1stに収録されている"Che"のカヴァーで、Sunn O)))が下降コードを分厚いギターでズズズと引き摺り、過去にVVV(Pan Sonic & Alan Vega)として2枚の共演盤を残し、Suicideを敬愛して止まないMika Vainioはエレクトロニクスで参加しています(なぜか相方のIlpo Väisänenは参加していないようです)。また、Joe Prestonが原曲よりもドスの効いた声でヴォーカルで参加、EarthのSteve Mooreもハモンド・オルガンで参加しています。意外と原曲に忠実なアレンジで少し驚きましたが、それぞれのパートが上手くハマっています。B1にはAlan Vega本人による'08年ライヴ音源を収録。未だ健在のようです。また、B2にはStephen BurroughsによるAlan Vegaソロの"Goodbye Darlingのアコースティック・カヴァーを収録しています。ちなみに、他にはPrimal ScreamやBruce Springsteenも本シリーズでリリースしているようです。3000枚限定、ヴァイナルのみのリリース。

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  1. 2009/08/23(日) 21:51:44|
  2. Noise, Avant-garde
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Summer Sonic 09 Osaka (8/8)

 '06年以来三年ぶりにサマソニに行ってきました。今回出演のNINが今年いっぱいで活動終了するやらなんやらと言っているようなので、これは最後の勇姿を拝まなければと思い、東京公演は仕事で観れなかったので、わざわざ大阪まで足を運んだのでした。普段は"音響"とか"ノイズ"とかのたまっている当ブログですが、最近はネタ切れ感が否めないので少しだけ思い出メモを残したいと思います。

School Of Seven Belles まず始めに観たのは、昨年末の来日公演を見逃していたSchool Of Seven Bells。元The Secret MachinesのBenjamin Curtisと元On!Air!Library!のAlejandra Deheza、Claudia Dehezaの双子の姉妹が結成したNY ブルックリン出身のユニットで、昨年出たデビュー作『Alpinisms』も高評価でした。一曲目はアルバムのオープニングを飾る"Iamundernodisguise"から。このトラックは'07年発売のPrefuse 73の『Preparations』でもフィーチャーされたもので、Deheza姉妹が歌い上げるどこか民族的な旋律が独特の雰囲気を醸し出します。その後も『Alpinisms』の楽曲を中心に演奏し、このユニットの特徴であるリズムマシーンとシューゲイズ〜サイケデリックなギター&シンセの音色に、姉妹の幽玄なヴォーカルワークが絡み合う幻想的なサウンドを堪能することができました。

NIN / Wave Goodbye その後は夕方のNine Inch Nailsまでの間、この日まで連日連夜残業続きだった体にはあまりにも過酷過ぎる灼熱の屋外を避けるように、インドアのステージで65daysなんとかやMercury Rev等を寝ながら鑑賞しました。私にとって人生初の外タレバンドのライブが'01年のMercury Revだったこともあり、その時も演奏した"All Is Dream"(ピカデリー梅田のテーマ、、、違うか・・・)が聴けたときはちょっと感激でした。
 そしていよいよNIN。東京会場とは違い、事前のポジション確保も必要無く自然と前10列目くらいまで移動。ツアーメンバーと共に登場したTrent Reznorはサングラスをかけ、ゴルゴ13以外の何者でもない風体でした。一曲目の"Home"をしっとり歌い上げ、続いて"1,000,000"で一気にボルテージが上がります。周りは一気にモッシュの嵐と化し、ここで早くも己の老体ぶりを認識し後方へと避難するのでした。その後も"Terrible Lie"や"March Of The Pigs"等の定番曲や最新作『The Slip』からの曲を織り交ぜ、前日の東京公演ではやらなかった"Head Like A Hole"へ突入。サビのシャウトのところで完全に理性がぶっ飛びました。そしてラストは"Hurt"。疲労からくる脱力感と、「これで最後なのか」という寂しさから、一緒に歌うこともできずただただTrentの声を聴いているだけでした。
 全14曲を演奏しライブは終了。人気絶頂だった90年代中ごろにはNirvana亡き後のUSオルタナ・シーンを牽引する役目を背負わされたNINも、00年以降はそのカリスマ性も薄れ、挙句の果てに某音楽雑誌の編集長からは"オルタナの死臭漂う"とも揶揄されるまでになりましたが、個人的には以前ほどの革新性は薄れたものの、コンセプチュアルな『Year Zero』や全編インストの4枚組『Ghosts』での実験性には彼の才能を十分に感じ取ることができました。ともあれ、ここで歩みを止めることとなったNIN=Trent Reznorですが、また何らかの形で音楽活動を再開する日を楽しみに待とうと思います。

Aphex Twin ラストはAphex Twin。彼は過去何度か来日していますが、私は一度も観たことが無い上に、私の中で彼は半ば架空の存在として認識されているため、サマソニへの出演は驚きでした。ステージ中央の高台にMac、背後中央と左右に三枚のスクリーンが配備され、おもむろにRichardが登場しライブは始まりました。Michel Jacksonや808 State、SquarepusherやBola(少しだけ)等の他ミュージシャンの楽曲と、自身の楽曲を絶妙なミックスでプレイするRichard。オールドスクール、アシッド・テクノ、ブレイクビーツ、ドリルンベース、ブレイクコア等のサウンドを縦横無尽に繰り出していきます。また、Weirdcoreによる死体検視やスカトロ等の放送禁止モノの変態極まりないVJもあいまって、会場は異様な盛り上がりとなりました。ライブ後半は私は体力の限界に達し、ほとんど身動きができてませんでしたが、こんなに強烈で刺激的なテクノのライブは初めてでした。これでAphex Twin名義で新作出してくれたら文句無しです。

 以上、今回のレポートとなりますが、帰りのシャトルバスを長時間待ち、会場を脱出するのに2時間近くかかったのはしんどかったです。その日は大阪市内に宿泊し、翌日は折角なので奈良〜京都を観光し帰りました。

  1. 2009/08/16(日) 02:18:02|
  2. Live Report etc.
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Wolf Eyes / Always Wrong

Wolf Eyes / Always Wrong
Wolf Eyes / Always Wrong (Hospital Productions) ('09)

 アメリカはミシガン出身の極悪ノイズ・トリオWolf Eyesの最新作。毎年NYのブルックリンで開催される世界最大級のノイズ・イベントNo Fun Festival(なんちゅう名前だ・・)でもおなじみの彼ら。他のノイズ界隈のミュージシャンと同様に彼らも膨大な数のリリースを誇るが、ここ最近の数作では意外や意外、Sub Popからもリリースしている(本作では"らしく"Hospital Productionsからのリリース)。Sub Popからのデビュー盤である『Burned Mind』ではミックスが小奇麗で凶暴性がコンパクトにまとめられていた感があり、割と聴き易い印象だったが、本作では彼らの本領発揮もいいところで、真の獣の姿を体感することができる。四方八方から襲い掛かる鋭利なハーシュ・ノイズ、エレクトロニクスに八つ裂きにされ、全身の関節という関節が外れたような脱臼リズムが執拗に繰り返される中、時には黒魔術の呪詛のように、時には断末魔の叫びのようにヴォーカルが呻る。そこには光など無く、ただ漆黒の闇が広がるだけの世界である。彼らが多大な影響を受けたThrobbing Gristleの謳う"Music From The Death Factory"が現代に蘇ったようだ。良い子のみんなは絶対に聴いてはいけない。

試聴

  1. 2009/07/19(日) 21:23:54|
  2. Noise, Avant-garde
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Sunn O))) / Monoliths & Dimensions

Sunn O))) / Monoliths & Dimensions
Sunn O))) / Monoliths & Dimensions (Southern Lord) ('09)

 先日の来日公演が記憶に新しいSunn O)))の通産7作目となるアルバム。オリジナル・アルバムとしては'05年の『Black One』以来の作品となるが、間に、Borisとの共演盤『Altar』('06)、ニューヨークの彫刻家 Banks Violetteとのライヴ・パフォーマンスを収録した『Oracle』('07)、ノルウェーの教会でのライブを収めた『Domkirke』('08)等の変則盤・限定盤の発表やメンバーのサイド・プロジェクト等、その超がつくほど精力的な活動のためか、それほど待たされた感は無い(なんとファン思いの二人なのだろう!)。本作はGreg AndersonStephen O'malleyの二人と、もうそろそろメンバーに入れてもいいんじゃない?と思うほど近年バンドとのからみの多いOren AmbarchiAttila Csiharの四人から成っている。

 本作を聴いてすぐに気づかされるのは、これまでの作品より楽曲の構成が緻密になり、アコースティック楽器を大胆に導入し音が多様化しているということで、単なる爆音・重低音バンドではないということを証明している(それは今までのギター、ベースに重きを置いた作品の中でも十分に感じ取ることはできたが)。前述のメンバー以外に本作に招かれたゲストも多分野に渡っており、各楽曲中でその力を遺憾なく発揮している。#1 "Aghartha"では轟音ディストーションの序章に導かれ、Attilaがドスの効いた声で語りだす。Julian Priesterによるホラ貝と、バイオリン、ヴィオラ、ホルン等の楽器、Orenのオシレーター・ノイズが渾然一体となる。ベースの弦をギリギリ引っ掻く音も効果的である(Keith Loweも何気に参加している)。#2 "Big Church"では出だしの女性コーラスに驚かされ、続いて雪崩れ込む轟音ギターの惨禍に震え慄く。EarthのDylan Carlsonがギターで参加。#3 "Hunting & Gathering (Cydonia)"ではSteve Mooreとその弟Tony Mooreによるトランペット、トロンボーンが楽曲のスケールを壮大なものにしている。メジャー・キーを奏でるブラス・セクションとリフを刻む低音ギターとの対比が非常におもしろい。最終曲の#4 "Alice"では叙情的なギター・アルペジオから始まり、ここでもまたトロンボーン等のアコースティック楽器が徐々に楽曲を盛り上げてゆく。最後にハープが儚く奏でられる瞬間はあまりに美しすぎて「これがSunn O)))の曲なのか!」と一瞬耳を疑いそうになる。

 本作でバンドは音楽的な成長を遂げた(いや、これまで隠し持っていた能力を最大限に引き出したというほうが近いだろうか)が、これを聴いた多くのリスナーがどのような感想を抱くのかがとても気になる。音の変化が大きいので賛否両論のような気もするが、僕は素直に感激した側だった。毎回聴く度に新たな発見がある非常に聴き応えのある作品だと思う。今年はじめに出た『KTL IV』の音楽的飛躍にも似たものを感じる。この最新型Sunn O)))のライブをまたこの耳で体感し、先の『(初心)ライブ』と聴き比べをしてみたい。

Maximum Volume Yields Maximum Results.

試聴Sunn O))) & Boris / AltarSunn O))) / Black One




  1. 2009/06/20(土) 00:14:20|
  2. Rock, Post-Rock, Jazz
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